【アニメ感想】『パーフェクトブルー』4Kリマスターを観ました!

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  youtu.be●原案
竹内義和パーフェクト・ブルー 完全変態』メタモル出版、1991年

●スタッフ
監督・キャラクターデザイン:今敏/企画:岡本晃一・竹内義和/企画協力:大友克洋・樋口敏雄・内藤篤/プロデューサー:中垣ひとみ・石原恵久・東郷豊・丸山正雄井上博明/脚本:村井さだゆき/キャラクター原案:江口寿史/演出:松尾衡作画監督・キャラクターデザイン:濱州英喜/色彩設計:橋本賢/美術監督:池信孝/撮影監督:白井久男/音楽:幾見雅博/音楽プロデューサー:斎藤徹/音楽A&Rプロデューサー:堀正明/振り付け:IZUMI/音響監督:三間雅文/音響効果:倉橋静男サウンドボックス)

アニメーション制作:マッドハウス

●キャラクター&キャスト
霧越未麻:岩男潤子/日高ルミ:松本梨香/田所:辻親八

 

 

※この感想は一部作品の内容を含みます。

 

 

 日本サイコスリラー作品の金字塔、『パーフェクトブルー』が、4Kリマスター版で、9月15日~9月28日までの各劇場にて、劇場公開中です。今回は、4Kリマスター版『パーフェクトブルー』を劇場で観てきたので、その感想を三点にポイントを絞って、書いていきたいと思います。

 

4Kリマスターについて

 4K作品を手軽に見られる環境が整ってきたとはいえ、まだまだ4Kが浸透している状況ではないかと思います。かく言う筆者も、本作を観るために劇場に行って、今回久しぶりに4K作品を観ました。

 4K作品、4Kリマスター作品も増えてはきています。とはいえ、いまだ一部作品にはとどまっているので、4K作品の制作手順が気になって調べると、かなり手間暇がかかる作業で、名作を一挙に4Kリマスター化、新作を4Kでというのは難しいみたいです。

 まずフィルムの傷・劣化をチェックして、必要があれば修復する。続いて、4K解像度で、フィルムをスキャンする。スキャンしたデータを、PC上で修復(レストア)していく。最後に、色合いを調整するカラーグレーディングが施され、4Kリマスター作品が完成します。一コマ一コマ目視で、チェック・スキャン・レストア・カラグレするというとてつもない労力がかかっているようです。

 4Kリマスター『パーフェクトブルー』に話を戻します。4Kリマスターの製作に、これだけ手間暇がかかっていると知ったのですが、作品全編通して4Kの恩恵を感じ続けるような、映像に鮮明さがあったかと言われると、疑問でした。ですが、裏を返せば、4Kリマスターの鮮明さを感じさせつつも、それ以上に作品に惹きこんでしまう『パーフェクトブルー』という作品にすごさを感じました。

 そうは言っても、全編で意識しなかったとはいえ、映像の鮮明を実感する部分は、随所にあったように思います。特に感じたのが、中盤以降に主人公の美麻が夢から覚めるシーンがあります。そのシーンでは、目、特にまつ毛部分が、一際ち密で鮮やかな描写に見え、「4Kのおかげなのか」と鑑賞しながら感じました。

 映像は鮮明、音声はクリアで、随所に4Kを感じられる部分はあり、4Kリマスターアニメを見られる貴重な体験でした。

 

劇場で観る『パーフェクトブルー』について

 今回、劇場で『パーフェクトブルー』を観て、4Kリマスターであることよりも、大きかったのは、そもそも劇場で『パーフェクトブルー』が観ることができてよかったということです。筆者が劇場で本作品を見たことがないための、個人的な感想ですが、これが今回のよい点の中で一番大きかったです。

 劇場で観た体験から振り返るとき、テレビやモニターの画面から見る、『パーフェクトブルー』は、いささか「画面の中の物語」感がぬぐえず、サイコホラーの魅力が縮減しているように感じました。

 その点で、「作品の解釈」ならぬ、そのような「作品体験の解釈」を試みるなら、『パーフェクトブルー』の作品内自体が画面になることが多いことも要因の一つかと思います。カメラ映像であり、撮影映像を流すテレビであったり、誰かの主観であったり。それらが自宅用の小さなスクリーンに映し出されるならば、そこで巻き起こる、「現実かと思ったら映像だった」という驚きのダイナミックさが損なわれてしまうのではないでしょうか。それはとりもなおさず、作品内の現実とフィクションが次第に混濁していく過程で起こる、「幻惑状態」が薄れてしまうことにも繋がっていきます。

 ということを思いながらも、ただ画面の大きさから生まれる、映像のダイナミックさも無視できません。暴力的なシーンを含め、静かに迫る恐怖とは別に、アクションシーンもふんだんに散りばめられています。アクションも含めて、やはり劇場のスクリーンで見ると、迫力が一段も二段も違うようです。

 

名作『パーフェクトブルー』について

 最後に、過去に『パーフェクトブルー』を見ている人も、見ていない人も、『パーフェクトブルー』を観返す/初めて観るよい機会だと思いました。名作と言われながらも、なかなか視聴する機会がなかった方は、劇場上映している今がよいきっかけになるでしょうし、すでに観ている方も、「劇場」でそう易々と観られるものではないので、本作を観返すよいきっかけになるのではないでしょうか。

 これに関連して思ったのが、『パーフェクトブルー』の一番怖いところは、観返すたびにおもしろさを増すということです。もちろん、観返せば話のストーリーも覚えて、次の展開が読めるようになり、続く登場人物の細かな行動・背景の詳細が予め思い返すこともできるようになってきます。つまり、広い意味で、作品の展開が予測できるようになってきます。

 しかし、『パーフェクトブルー』の怖いところは、その毎度毎度の予測が成立するための各シーンの意図がしっかりと込められているように感じられるところです。観て・予測して、冷静な眼で本作を観て初めて、本作が持つ計算高さを体感できるでしょう。「サイコホラー」×「アイドル」のエンタメを成立させるために、そのすべてのパワーを80分という短い時間に押し込めて、初めて『パーフェクトブルー』という名作が完成していることが実感できます。

 

 『パーフェクトブルー』は何度も観ても、いやむしろ、何度も観るたびに魅力を増し、新たな発見をさせてくれる作品かと思います。

 気になった方は、ぜひ劇場に観に行ってみてください。筆者もあと一回はできれば観に行きたいです。