【アニメ感想】デジモン映画「3本立て」を観ました!

©本郷あきよし東映アニメーション

 

※この感想は、『デジモンアドベンチャー』・『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』・『デジモンアドベンチャー02 ディアボロモンの逆襲』の内容に一部触れます。

 

 

概要

 「デジモン」と言えば、1997年に育成ゲームが発売され、それ以降多様な展開を続ける長寿コンテンツです。10月17日から新作映画『デジモンアドベンチャー 02 THE BEGINNING』が公開されます。20年以上続くシリーズの新作映画公開を記念して、10月20日より過去の「デジモン」シリーズ作品三作品が公開中となっています。

 

デジモン映画「3本立て」の詳細は、以下公式サイトの情報もご参照ください。

www.toei-anim.co.jp

 

 今回、『デジモンアドベンチャー02』の登場人物たちが登場し、「選ばれし子どもたち」誕生の真実が明かされることを軸にして、10年後の彼らが活躍します。そのため、記念上映では、『デジモンアドベンチャー02』に関わりの深い、『デジモンアドベンチャー』、『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』、『デジモンアドベンチャー02 ディアボロモンの逆襲』というライナップが揃っています。

 「デジモン映画」三本立てを観てきました。三作品とも、あの当時を思い出させる懐かしさ、今なお色あせないデジモンの魅力を再発見できました。

 

公開中の三作品

デジモンアドベンチャー

・スタッフ
監督:細田守/脚本:吉田玲子/キャラクターデザイン:中鶴勝祥作画監督山下高明美術監督:徳重賢/音楽:有澤孝紀

 『デジモンアドベンチャー』で主人公となる太一、その妹のヒカリが幼い頃に、不思議な生き物、コロモンと出会いが描かれています。『デジモンアドベンチャー』シリーズ最初の作品であり、本作監督の細田守初監督作品でもあります。

 パソコンから突如現れた卵。孵化した後の不思議な黒い生き物。そして、形態変化(進化)を遂げる。最後には、上空から舞い降りた別の生き物(パロットモン)との激しい戦闘。

 不思議な生き物(=デジモン)との出会い、その不思議な生き物を通じて、知らない世界を子どもたちが覗き込むところに、本作品の魅力がまずあります。未知の時間に起きる、未知の生き物たちによる戦闘を、夢のように子どもたちが体験します。子どもたちだけの体験を、子どもたちの目線で体験できるのが、『デジモンアドベンチャー』の魅力でしょう。

 

デジモンアドベンチャー  ぼくらのウォーゲーム!』

・スタッフ
監督:細田守/脚本:吉田玲子/キャラクターデザイン:中鶴勝祥/キャラクターデザイン・作画監督山下高明・中山久司/美術監督:田村せいき/音楽:有澤孝紀

 『デジモンアドベンチャー』と同じく、細田監督作品となるのが、『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』です。本作は、細田監督作品の『サマーウォーズ』の原型とされていますし、それだけでなく単体として人気の高い作品です。

 本作も、卵、デジタマから話は始まります。インターネット世界のバグから、デジタマが生まれます。その卵が孵化して、ネット上に新種デジモンが誕生します。新種デジモンはデータを食べて成長し続け、ネット世界を遊んで荒らし始めていきます。その影響は、インターネットに接続した現実世界にも及んできます。新種デジモンを止めるべく、お台場にいる太一・光子郎、島根県に帰省中のヤマト・タケルたちが立ち向かう、というストーリーになっています。

 新種デジモンとのギリギリの攻防、インターネット世界の新奇なデザイン、テレビシリーズの彼らが帰ってきた高揚感、エンタメ色満載の作品になっています。

 

デジモンアドベンチャー02 ディアボロモンの逆襲』

・スタッフ
監督:今村隆寛/脚本:吉田玲子/キャラクターデザイン:中鶴勝祥作画監督中澤一登・亀井幹太/美術監督:行信三/音楽:有澤孝紀 

 今度は、時間軸が進んで、『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』から三年後が舞台。そこには、『デジモンアドベンチャー02』の面々も登場してきます。『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』で倒したはずのディアボロモンが、データの残滓から復活してしまいます。彼の指揮で、増殖しネット世界から現実世界へ送り込まれるクラモン、ディアボロモンの脅威に、新旧「選ばれし子どもたち」が立ち向かうことになります。

 『デジモンアドベンチャー02』でも描かれた、旧「選ばれし子どもたち」と新「選ばれし子どもたち」との共闘、そして旧から新へのバトンタッチが、熱く少し物寂しく描かれます。旧のディアボロモン(完全体)から新のアーマゲモン(究極体)に変わり、「選ばれし子どもたち」は二世代が力を合わせて対抗する、熱い展開が繰り広げられます。

 

デジモンへの叫びと懐かしの名曲

 以上で、あらすじと一言感想を添えて、書いてきました。三作品ともが、長さにして20~40分という中編ほどながら、盛りだくさんの内容です。どの作品でも、新たなデジモンが登場して、混乱が生じて、その混乱が収まる、あるいは子どもたちが収めています。そのため、かなり密度の濃い作品たちが、三作品立て続けに上映され、間のエンディングになって初めて、かろうじて一呼吸おけるほどでした。視聴済みの作品とはいえ、劇場効果が侮れないこともありますが、「デジモン」の求心力が続いていることに驚かされました。

 劇場効果といえば、三作品ともに、音がかなり印象に残りました。『デジモンアドベンチャー』ではヒカリが笛を吹き、劇伴で『ボレロ』がかかり続け、演出の面で音が全面に押し出されていたと思いますし、『デジモンアドベンチャー』で、太一とヒカリが気絶したコロモンを呼び、『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』では、無限に増殖した新種デジモンに倒されたウォーグレイモン・メタルガルルモンをネット世界に入り込んだ太一・ヤマトが呼びかけ、『デジモンアドベンチャー02 ディアボロモンの逆襲』では、声が聞こえるのに姿の見えない、ブイモン・ワームモンの名を大輔・賢が叫んでいます。

 各人の叫びは、彼らのパートナーたるデジモンや周囲にいる子どもたちの耳へと届きます。そのことは、気絶したデジモンを目覚めさせ、たくさんの子どもたちに道を開けさせることで、視覚的に現れはしますが、この叫びには、映像として起こる出来事だけではなく、その音から力強さが伝わってきます。

 この力強さの実感には、ひとえに映画館の音響の効果はあるかと思います。劇伴の美しさは、映画館の音響が精細に音を奏でることから生じるように、本作の叫びの力強さは、劇場の音響設備によるパワフルな大音量に由来しているでしょう。彼らのデジモンへの強い思い、その思いゆえデジモンたちのピンチに切迫した感情が、直に音に乗せられて感じられます。

 音といえば、視覚や嗅覚などと同様に、音楽などの聴覚的イメージは、何らかの記憶を喚起します。特に、テレビアニメシリーズを経た『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』、『デジモンアドベンチャー02 ディアボロモンの逆襲』では、往年の名曲OP(「Butter-Fly」、「ターゲット〜赤い衝撃〜」)が熱いシーンを盛り上げ、進化時にはおなじみの挿入歌(「brave heart」)が流れていました。

 懐かしの面々を再び劇場で観られただけで、映画を見た高揚感は高まりましたが、懐かしの音を聞いた途端、最高潮になります。一つの演出として、OP・EDやメインテーマとなる曲を、挿入歌に流すというのは、さして新しい手法ではないかと思います。ただ、当時、テレビで聞いていた音楽が劇場で流れる興奮と初代の『デジモンアドベンチャー』、『デジモンアドベンチャー02』も古典になりつつある今、改めて劇場で聞く高揚感は、全く別物で、こういう体験もあるのかと思わされました。

 

 

 男児向けゲームとして発売された「デジモン」シリーズだが、アニメシリーズには、子ども向けに留まらない魅力があります。とはいっても、まずもって「見て・聞いて」おもしろい、という身体に訴えかけてくるシンプルなおもしろさに溢れており、今でも子ども向けとしても色あせていないと感じました。「デジモン」シリーズの出発点、そしてテレビシリーズの劇場版とも、また単発のアニメ映画としても楽しめる、三作品をぜひ劇場で観てみてください。